第33回 所有接尾辞(2)
さて、今回も所有接尾辞のお話です。前回は所有者も所有物も単数の場合だけを取り上げました。今回は所有主が複数で所有物が単数の場合をご紹介します。
基本的な考え方は主語が単数の場合と全く同じですから、前回の「第32回 所有接尾辞(1)」をご参照ください。
前回ご紹介したようにハンガリー語では独立した単語を使うのではなく、所有物の単語の後ろに人称の所有を表す接尾辞を付けてそれを表現します。
主語がénのとき所有接尾辞は-m、teのときは-d、őのときは-a/-eでした。
主語が複数の場合はそれに応じて所有接尾辞も別のものが入ります。下記を見てください。
所有主 |
後舌母音の単語 |
前舌母音の単語 |
円唇母音の単語 |
mi |
autónk lakásunk |
biciklink szekrényünk |
cipőnk függönyünk |
ti |
autótok lakásotok |
biciklitek szekrényetek |
cipőtök függönyötök |
ők |
autójuk lakásuk |
biciklijük szekrényük |
cipőjük függönyük |
※ 所有主がönとönökの場合はそれぞれő、őkと同じく-a/-e、-uk/-ükになります。これは動詞の活用と同じですね。
次に「〜の...」表現を見てください。
「私たちの自動車」という場合は「az autónk」でもいいのですが、特に所有主を強調する場合は「a mi autónk」という言い方をします。
同様に「あなたたちの自動車」の場合は「a ti autótok」になります。また単数の場合でも「私の自動車」の場合は「az én autóm」になります。
ただし、三人称の場合はちょっと注意が必要です。
三人称単数の場合、「あの人の自動車」は「az ő autója」になりますが、
三人称複数(すなわち「あの人たちの自動車」)では「az ők autójuk」とはならずに「az ő autójuk」となります。
難しそうに見えますが、要するに単語の接尾を見れば、所有主が誰かが分かる仕組みになっています。
さて、次に所有関係を文で表す場合の文型についてご紹介しましょう。
一般的に言って所有関係を表す場合、日本語でも二つの表現の方法があります。一つは「持つ」という意味の動詞を使って
「山田さんは自動車を持っている」という文型を使います。英語やドイツ語などはこのような言い回しをしますね。
それに対してもう一つの言い方は、存在の動詞を使い、「山田さんのところには自動車がある。」という形の文型を使うものです。
ヨーロッパの言語の多くは前者を取るのですが、ハンガリー語では後者を用います。文型は所有主の単語に
「〜にとって」に相当する接尾辞-nak/-nek をつけ、所有物の単語に所有主の所有接尾辞を付け、その二つを存在の動詞vanで結びます。
この文において主語はものです。
「Jánosは自動車を持っている」という文は次のようになります。
Jánosnak van autója.
同様に
「Évaは自動車を持っている。」 → Évának
van autója.
「Emilは自動車を持っている。」 → Emilnek
van autója.
接尾辞-nak/-nekの人称形(つまり「わたしにとって」、「あなたにとって」は一つの単語として独立したかたちをとります。
次の一覧を見てください。
én |
nekem |
te |
neked |
ő(ön) |
neki(önnek) |
mi |
nekünk |
ti |
nektek |
ők(önök) |
nekik(önöknek) |
「私には妻がいる。」 → Nekem van feleségem.
「あなたたちは家を持っている。」 → Nektek van lakástok.
「私たちは(1台の)自動車を持っている。」 → Nekünk van autónk.
韻をふんでいるところが面白いですね。
今回はこの辺で。
それでは。